概観 全体の構成
【存在の定義】
世界は存在するもののすべてである。すべての存在が世界である。
存在とは他との関連である。関連は世界のすべての関わり、連なりである。 他との関連は相互作用として現れる。関連は個々の存在を位置づけ、存在の質 を規定する。
相互作用は個別の運動単位であり、その相互作用の関係全体が個別の存在形 態である。存在・関連・相互作用として世界の運動があり、これが世界の普遍 的存在であり、普遍的運動である。存在とは関連し、相互の関係として運動す ることである。運動として存在はあり、他と関係する。
世界は区別される多様な存在である。区別するのは存在自体である。運動の 発展として多様な存在形態がある。
多様な世界の存在、存在の多様な形態は無秩序ではなく構造がある。
【相互作用の存在構造】
相互作用は全体の中で一様に、あるいは混沌として、個々の要素が各々の運 動により各々の作用をし、作用されているわけではない。存在があり、その存 在が他と相互作用するのではない。相互作用は関係する作用であり、作用=運 動がありその関係として存在が現われる。存在は運動のあり方である。
存在の現われ方は他との関連である。他との関連として存在し、存在の質が 実現し、存在の形態がある。その関連は作用の関連であり、運動である。個別 の存在は他との関連のすべての相互作用の実現としてある。
存在は相互作用として自らの存在を対象との関係に実現する。存在は自己産 出の過程である。存在は自己を対象化する。自己の対象化は他との関係として 自己を他の関係の内に実現することであるとともに、対象と同じ、対象にとっ ての対象とすることでもある。存在は自己の外化であり、自己の客体化の運動 である。
相互関係として捨象された相互作用は相互に区別し、関係づける閉じた関係 である。他に対して閉じており、閉じて他と区別される。相互作用の内の関係 と、相互作用が実現している他との関係とは区別される。
【相互作用の場】
相互作用は相互関係を実現する媒体の運動と、相互作用としての運動の統一 として存在する。相互作用を実現する媒体の運動は相互作用の場であり、一般 的運動形態である。相互作用は一般的運動形態を特殊化する新しい質の運動で ある。一般的運動形態に対する特殊的運動形態として相互作用は存在する。一 般的運動形態を自己の存在形態として特殊化する。一般的運動形態を媒体とし て、一般的運動形態を相互作用の系として組織する。一般的運動形態を媒体と して、他に対する自己組織化の運動として他との相互作用を存在=関係として 実現させる。
【相互作用の存在の二重性】
相互作用は一般的運動形態と、特殊的運動形態の二重性をもっている。一般 的運動形態は相互作用の媒体であり、運動の場である。特殊的運動形態は相互 作用の関係の実現であり、運動の質である。
相互作用の存在の二重性は、より基本的相互作用を一般的運動形態とし、よ り発展的相互作用としての特殊な運動形態の媒体にする。相互作用の二重性は 存在の質的発展の構造的基礎である。
存在は運動としても、自己の外化としての自己産出と、自己の外化による自 己組織化との二重性をもつ。存在形態としても、運動形態としても、運動を構 造化し、発展させる存在として相互作用がある。
【相互作用の階層性】
相互作用は孤立していない。全体の連関の中にあり、全体の運動の部分であ る。
より基本的相互作用はより一般的運動形態としての一つの階層である。相互 作用は相互関係として一つの階層にある。相互作用は相互作用間の関連として、 より発展的相互作用をつくりだす。より発展的相互作用間のより特殊な運動形 態として一つの階層をなす。より特殊な運動形態はより一般的運動形態を発展 させた階層として重なる。
さらに、相互作用の発展によってより発展的な運動の作用単位、より発展的 相互作用は基礎となる相互作用のひとつの現れとして実現される。相互作用は 階層性をなし、多元・多次的な関係である。
【存在単位】
世界の運動の主体は個別である。個別は全体の運動の作用点として全体の関 連の中の結節点である。全体の運動が部分の運動として相対的静止、あるいは 自律した運動として現れる単位が個別である。
そして、個別は発展し、より発展的な個別を作り出す。より発展的な個別を 作り出すことは、そのより発展的個別間での相互作用、より発展的運動の相互 関係として、新しいより発展的階層を作り出すことである。
また、より発展的な個別はその個別の内に階層を持っている。個別はその内 と外に階層を持ち、階層として全世界と連なっている。
【個別と階層】
個別は個別自体階層構造をもっている。個別はその個別を含む階層、言い替 えればその個別らが構成する階層において個別である。しかし、階層はより基 本的階層に依存している。そして個別内の個別を構成する階層は、個別を取り 巻く階層から分離されてはおらず、同一階層は個別の内外に関わらず、連続し た相互作用の関連にある。
したがって、個々の個別について理解しようとする場合も、対象とする個別 の階層にのみ限定してはならない。より基本的な階層からの構造を対象としな ければならない。そのためには一般的な個別のあり方と、その階層構造の特殊 性を見ておく必要がある。
このように、個別と階層は対立する概念ではなく、相互作用における異なる 現象形態の形式である。
より基本となる個別の究極、すべての基本となる個別は、最も基本的な世界 のあり方であり、その存在は部分と全体を分けることのできないものである。 それは、究極物質として自然科学の追求するものと一致する。
【個別と運動】
個別は定型化した運動が、定型化した形態間で新しい相互作用を新しい運動 として生成したものである。外枠として定型ではなく、構造としての定型であ る。
絶対的運動において現れる相対的静止は、絶対的運動を特殊化したものとし て現れる。相対的静止は絶対的運動でありながら、それを自律、統制する運動 として静止を実現する。絶対的運動を統制する運動によって、絶対的運動は特 殊化・相対化される。
【ひとつの相互作用】
ひとつの相互作用だけでは全体と部分は区別されない。相互作用は質として あり、量として変化する運としてある。他の相互作用と質的に区別されるが、 相互作用間の相互作用が現われなければ当の相互作用に部分を区別することは ない。全体の運動としてひとつの相互作用は現われる。
運動の媒体と作用は並行し、依存関係も規定関係もない。ひとつの相互作用 だけでは特殊化は現われない。
注115
【相互作用の重なり合】
複数の相互作用が重ね合わさることによって全体と部分は区別される。重ね 合わせによって共通性と差異性が現われる。複数の相互作用間の共通性と差異 性が運動形態の違いとして、新しい運動形態をとって現われる。相互作用のそ れぞれの違いとしての差異ではない。重ね合わせによって相互に規定し合うこ とで、相互にそれぞれの現象形態と違った運動形態が現われる。
注116
【異質の相互作用の相互規定】
同じ質の相互作用の重なり合いとしても新しい運動形態が現われるが、質的 に違う相互作用の重なり合いは新しい質をつくる。相互の規定性は量的差異で はなく、質的差異をつくりだす。
相互に規定し合うことによって、相互に他と区別される部分として現われる。 それぞれの相互作用としての量的変化は、相互規定による新しい質のありかた に対しては作用しない。新しい質としての運動形態は、元の相互作用としての 運動に対して保存される。
新しい運動形態は元の相互作用に対して相対的に独立した運動形態=存在で ある。また、新しい運動形態としての相互作用間で相互作用する。新しい運動 形態が同質であっても、重なり合うことによって相互作用間で相互作用する。
異質の相互作用間の相互作用は、同質の相互作用間の相互作用と違い、質的 に違うより発展的運動形態を実現する。質的に異なる相互作用間の相互規定は、 新しい質を規定する。新しい質として規定される相互作用は新しい質としての 存在、より発展的個別としてある。
【相互作用の階層規定】
同質の相互作用間の関係は一つの階層内の相互作用である。異質の相互作用 間の重なり合いによる新しい運動形態は、より発展的階層の運動形態である。 階層を貫く相互規定性によって、より発展的な運動形態・個別が実現する。
蛇足28
注117
【存在の汲み尽くし】
存在は汲み尽くせないものか。
基本となる個別は、それ自体より基本となる個別を含まない。同じことであ るが、それ自体の内に階層構造を持たない、そのようなものが存在するのか。
注118
究極の存在形態は存在一般にたどりつく。存在の構造は論理や観念の階層で はない。究極が存在するかも含めて実証の問題である。現代科学技術でも見極 め切れていない。
階層構造の問題は、層の重なりの繰り返しをたどることではない。当面の一 番下の層にたどりつき、その層の下にある階層を求めるというものでもない。 それぞれにスケールの異なる層が階層をなしている。おおざっぱに階層分けし た階層のひとつひとつが、さらに細かな階層構造をもっている。現実の存在の 汲み尽くせない階層性が問題なのである。
【階層と運動】
階層はひとつの運動形態の全体における連なりである。
個々の物も階層構造をなしている。しかも、階層は個々の物の構造だけでな く、世界の構造も示すものである。
世界のあり方としての最も基本的な運動によって世界はある。すべての物の 最も基本的な運動形態として世界は先ずある。この最も基本的な形態が最も基 本的な階層である。最も基本的な階層で物質の究極的構成単位が運動の主体と して相互に関連し、全体の運動を実現している。
運動には階層の存在形態としていわば水平の運動と、階層の発展形態として 垂直の運動とがある。階層の存在形態としての運動は量的変化として現れ、階 層の発展形態としての運動は質的運動として現れる。
【個別の階層】
個別はその内に階層構造を持っている。階層に応じた運動をしている。
より基本的階層の存在・運動なしにより発展的階層の存在も運動もありえな い。より基本的階層がより発展的階層の存在の基礎である。より発展的階層は より基本的階層をより発展的運動として規定する。そうした存在関係と、規定 関係の総体として個別の存在がある。
個別内の階層の運動主体は個別ではない。いくつもの階層の運動の統一体、 諸階層の運動を統一し、しかも全体として運動の主体となるものが個別である。 個別は他の、より発展的個別の内に取り込まれ、より発展的個別の部分的運動 として、より発展的個別の全体的運動によって統制された運動形態になる。
個別は階層構造をなす存在であり、かつ様々な階層において個別としてある。 より基本的個別、より発展的個別、様々なレベルの個別があり、それぞれによ って現実の階層を特徴づけている。
【個別と個別】
個別の他との相互作用は、同一階層の個別間の関係と、異なる階層間の関係 としてある。
同一階層の個別間の関係としての相互作用は階層そのものである。
個別として発展的な階層における個別の対立として、他と相互作用する。よ り基本的諸階層において同一であるからこそ、発展的な階層において区別され る。基本的階層において同一であるからこそ相互作用し、発展的階層において 個別として区別される。
個別として区別された存在は、基本的階層の関係でも区別される。発展的階 層のみが対立する関係になるのではない。基本的階層の運動も個別として他と 区別される運動としてある。その全階層を貫いて個別として運動・存在し、他 と関係する。
したがって、個別間の関係については、先ずより基本的な諸階層の運動を基 礎として個別の運動を関連づけねばならない。特徴的なのは発展的階層におけ る区別でるが、区別の関係を基礎づけているのは基本的階層である。基本的階 層における運動が発展的階層の運動として規定される関係が、発展的運動の質 を規定している。
【異階層間の個別】
異なる階層間の個別の相互作用は、より発展的個別の存在の構造に関わる問 題である。
異階層間の個別の相互作用は、直接的なものではない。より基本的個別とよ り発展的個別の相互作用は、より基本的個別の階層における相互作用である。 より発展的個別は、この相互作用のある階層における運動をその個別としての 全体の運動として統一する。すなわち、水平的運動である相互作用と、垂直的 運動としての個別の統一運動、この全体が異階層間の個別の相互作用の現象で ある。
【個別内の階層】
個別はそれ自体階層構造をなしている。それぞれの階層で個別外の個別と同 一階層において相互作用をし交替することもある。
個別はそれを構成する諸階層すべてにおいて、個別外の個別と相互作用をし ているが、これは個別の全体の運動として統一されている。個別の独自性を維 持するこの統一する力が、個別自体の運動によって、あるいは個別外からの働 きかけによって破られると、個別はより基本的個別に還元される。
【超える存在】
階層の発展は連続しているが、飛躍もある。
階層自体質的発展で不連続であるが順序性と、継続性がある。その意味で発 展に連続性がある。
基本的階層を基礎に発展的運動形態を形成するが、より基本的階層の深くま で規定する運動形態の再構成がある。歴史的画期をなす発展である。階層の発 展の飛躍はより基本的階層のより深く基本的階層までを規定する質的発展であ る。より深く基本的運動形態までを自己組織化する存在として現われる。大き な分類として区別される階層間の違いは、飛躍的発展である。
注119
非連続性のゆえに基本的階層における連続性が見えにくいが、より基本的階 層の深くまで探ることによって、全体の発展の連続性が見えてくる。
注120
概観 全体の構成