続き §1.そもそも世界観とは
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概観 全体の構成
ここ「序」で述べておくべきことは、これから述べる世界のおおよその仕組 みと簡単な結論である。さらに、世界観の効用について宣伝する。ついでに私 の生き方の弁明をつけ加える。
【世界観】
私たちの世界はどうなっているのか。私たちに世界はどう見えるのか。私た ちは世界をどう生きるのか。
世界の見方は人それぞれに違っている。世界についての専門家はいない。哲 学者も、今日ではもはや専門家ではない。個別科学がそれぞれの分野に専門化 し、科学者それぞれが、それぞれの専門分野の外ではアマチュアでしかない。 人類の知的成果を受け継ぎ、未来を見通し、展望を示すべき世界観に対して皆 がアマチュアである。専門家と素人の区別がないうえは、すべての人々が世界 を生きることの専門家である。
今日、諸科学のほんの一部分の成果であっても、専門外の者が理解すること は難しい。学術関係の文書は、基礎知識のない者にとっては知らない外国語で かかれているに等しい。
他方、知識のごった煮なら、時間と金さえあればたいていの物は手に入る。 一般の人々が関心を持つ物事について、少しばかり余計な知識を仕入れて受け 売りすることはできる。職業が科学者であれば、専門外の事でも売買できる。 蛇足1
【世界観の存在可能性】
そもそも「世界観」などという形式が成り立つか、という問題がある。世界 の見え方、世界の見方、世界の考え方としての「世界観」の可能性。世界と世 界観をひとつの表現とする「世界観」の可能性。
【量的可能性】
世の中にある本に限らず人によって表現されたものは、世界のなんらかにつ いて述べたものである。それでも世界の極ごく一部分を表現しているにすぎな い。そのすべての成果を集めて眺めることなど不可能である。そのすべてを含 み、超える世界について「世界観」として表現することが可能なのか。
【質的可能性】
科学者にとっても、専門分野外の事柄については理解することがむずかしい のに、諸科学の最先端の成果を理解し、互いに理解しえたことを確認し合う可 能性はあるのか。
諸科学のすべての成果を世界観の内に理解し、表現できるのか。
【形式的、論理的可能性】
世界観は世界全体を対象にする。「世界観」自体も世界の一部分である。一 部分が全体と対応できるのか。注1
【現実的可能性】
しかし、われわれは毎日自分の属する世界の新しい物事について新しい判断 を下している。その判断の基礎にはそれぞれの世界についての理解がある。
現実に可能性や完成度はともかく、ひとつの表現として「世界観」が必要で ある。
【世界観クラブを始めよう】
日々何等かの判断が必要であり、新しい物事に巡り会い理解する必要がある。 日常的に世界についての理解、「世界観」が基礎になくてはならない。また逆 に自らの「世界観」を再度確かめ、また作り変えることになる。人生を見通そ うとするときも、計画を立てる時にも、自分のものであれ、借りものであれ 「世界観」を基礎にする。正しい「世界観」、自信のある「世界観」がなくと も、世界のすべてを理解していなくとも理解し、判断し、行動しなくてはなら ない。
「知りもしないで、理解もしないで行動するのは無分別である」と言うのは 処世訓であるか、責任回避の言い訳でしかない。道具であれ、機械であれすべ てを理解しなくても使えるし、利用しなくてはならない。まして生きていく世 界に対し、理解できなくても食べ、寝て、目的を見いださなくてはならない。
ならば許される限り、世界についての理解を深めておくことは必要なことで、 有意義なことである。重要な決断をしなければならないほど、より確かな「世 界観」に根拠を求めなくてはならない。
世界について多くの人が昔から、様々な分野で語ってきている。「世界観」 について考える材料は、質量共にあふれている。そこには誤りも多く含んでい る。最新の科学の成果を取入れ、より効率的に「世界観」を手に入れるには、 互いに協力することが必要である。
そのための「世界観」の「意義」「要素」「論理」「構造」を共通化する場 がないように思える。「世界観」を表現として主張するだけにとどまらず、個 々の成果をデータベース化し、それを運用するコミュニケーション・システム が作れないものだろうか。そんな「世界観クラブ」の結成呼びかけをしてみた い。
「始めの始めに」終わり
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【必要な全体の概観】
この「序」はこれから述べる世界観の全体像を簡単に表現しなくてはならな い。世界観の問題は結論だけで済むものではないからである。世界観は「世界 観」自体を含む世界のすべててを問題にする。そこでは前提の再検討から結論 を導きだすまでの過程のすべてと、その過程の全体が問題になる。
「世界観」も世界の内に存在しているが、世界観は世界と「世界観」の関係 をその内に含んでいる。
世界観では世界の構造と「世界観」の構造、その統一的対応関係としての全 体のまとまりが強調されなくてはならない。「世界観」自体の構造が世界観の 基本的課題である。個々の事柄を残らず取り上げることよりも、個々の事柄か らなる世界の構造と、それに対応する「世界観」の構造と、二つの構造物から なる相互に対応する構造全体を強調しておかねばならない。
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