概観 全体の構成
展望を持つために「到達点」という考え方が重要である。
わかっていても何故できないのか、何故前進できないのか。
【到達点の確認】
わかっているのは目標とその価値である。目標に向かう主体的な手段・方法、 客観的な条件はわかっているのか。わかっていても意欲がわかないのは、やは り対象と自分についてわかっていないのではないか。「わかる」とは実現でき ることである。「自分のものにする」とは自分が制御できる状態にすることで ある。
わかっていてもできないのは、結局わかっていないからである。到達点とは 将来どこまで進まねばならないかではなく、今どこまで進んできたかである。 価値ある目標が実現困難ではあっても見えることが到達点である。目標が設定 でき、価値がわかるということは自らの主体性、方向性がつかめていることで ある。人間は世界を理解することで、自らの価値観とそれに基づく世界の価値 を見い出す。世界が見えるところまで達したことは、前進してきているのであ る。
こうして見えた目標はいつまでに実現しなくてはならないという期限はない。 実現に向かうことが肝心であって、期限は二次的問題である。期限が問題にな る課題は当座の、一時的課題である。期限が過ぎれば終わってしまう課題は、 実現できるか実現できないかの結果しかない。肝心な課題は自らの存在の限り 継続する課題である。
何れの課題であっても、条件を汲み尽くすことが到達点に立っての現実的立 場である。夢想することなく、悲観することのない真の楽観主義の立場である。
【展望の獲得】
自分だけの問題ではない。集団で、組織で、社会では、主体が個人ではなく 社会的人間である。全体的人間関係としての主体として自らを位置づける。 「人がダメ」「自分がダメ」なのではなく、自分も人も含めた社会的主体の到 達点から展望するのである。
欠けている条件を整える課題、欠けている条件整備の優先順位、目標、スケ ジュールを立てることが実践の出発点であり、到達点を踏まえることである。
【日和見主義】
到達点を明かにせず主観的な情勢判断は現実離れした目標を幻想する。現実 離れした目標を実現しようとすれば一揆主義に陥るか、実践を放棄する。結局 到達点までも後退させる。
現実を無視した実践は限度のない過激な行動に発展する。結果を無視するし かない一揆的行動は、主観的には最高のエネルギーの実現である。傍観者にと っても刺激的である。しかも真の冒険家は結果の可能性を十分に計算してから 実践する。結果を計算せずに実践するのは「冒険主義」である。
困難な課題にあきらめ、あるいは一揆主義的、冒険主義的行動は失敗して課 題を放棄してしまう。何れも現実を変革する努力を放棄する日和見主義である。
一度でできてしまう課題はたいした課題ではない。実践は失敗の繰り返しに よって失敗の原因を明らかにし、次第に成功のための条件を獲得していく過程 である。歩くことも、話すことも、学ぶことも、考えることも失敗の連続の中 で獲得してきた能力である。結果は失敗であっても、達成できた要素はあるは ずである。達成できなくとも、繰り返しの蓄積によって主体的条件は変化する。 失敗しても繰り返し成功を目指すことを放棄しては何事も成就しない。
「到達点」とは現状肯定のための言い訳ではない。自らの立場を正当化する ためのものでもない。
【現実社会の評価】
現実に生活している社会は資本主義だから、社会主義だからとして善し悪し は評価できない。理想と比較すればいつの社会も悪である。過去と比較すれば いつの社会も基本的には発展してきている。静的に現社会の善し悪しは評価で きない。この現実以外に存在する社会はないのであるから。
人類史的発展を推し進める社会になっているかどうかを基準とし、動的に社 会は評価される。社会全体が、個々それぞれの社会が評価される。現社会は人 類の歴史的到達点に対して、相対的に評価される。
個人としては主体的に社会を評価する。就職の選択として、仕事上の価値判 断として個人的に評価する。実践的に、現到達点から、理想に向かう社会の運 動として、自分の生き方として社会的評価を行う。個人の社会についての評価 を基準にして、個人の主体的生き方を評価する。社会についての評価は実践的 である。
理想と自分との関係によって方向性、価値体系を明らかにし、理想実現のた めの課題を日常生活の中に具体化する。現実的理想は理想としていかに高くと も、現実の内に具体的課題を展開できる理想のことである。理想と関係づけら れた日常的課題を追求する実践が、現実的実践である。
その過程で到達点を明らかにし、展望を確認する。
自分の生き方、生活スタイルの可能性を追求する。自分の生活スタイルと人 の生き方の多様性を認める。違う者同士の協力・共同の主体的・客観的到達点 と展望を確認する。
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