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第6章 地域情勢

【生活の場である地域】
 あらゆる人間にとって普遍的場である。現実との確実なつながりの場である。 ひとそれぞれによて生活の場に対する意識は違っても、生きる上で不可欠の場 である。しかし、資本主義社会の発展と共に都市勤労者階層が増大し、大家族 が解体し、個人単位の生活者が居住する都市の人間関係が一般化しつつある。 かつての家族を中心とした人間関係を取り戻そうとしても不可能である。都市 近郊には勤労者の大家族が一緒に住める宅地は存在しないし、一人の勤労所得 だけで家族を養い、子供を教育することは非常に困難である。共働き、パート、 アルバイトなしで子どもを育てることは困難である。子どもを社会的に受け入 れることの意義を行政は容易に認めない。放置される子どもによって学校は荒 廃し、教育の場でなくなってしまう。個人単位に分かれた上で新しい人間同士 の関係を築くしかない。
 地域では永住者、短期居住者、勤労者、訪問者等、人々の構成も均一ではな い。都市と農村、旧市街地と新興住宅地、商店街と住宅街等地域によって人々 のつながりも異なる。
 より積極的な地域環境の向上が図られることが生活基盤を整備し、人間関係 を柔軟にすることになる。地域の治安は生活基盤と、人間関係の総合環境とし ての問題である。

【職場を取り巻く地域】
 職場も生活地域から切り離されていない。職場は企業活動の場だけではなく、 労働者等の生存の場でもある。睡眠時間以外の大部分を過ごす場であり、食事、 文化活動、条件によっては育児すら関わる場である。
 職場周辺の他人の生活の場としての地域でもある。
 地域に産業があることが地域活性の主要な要素である。法人税収、社会基盤 の整備、雇用、社会環境を整える基礎になる。人材が集まることは企業にとっ てだけでなく、地域社会にとっても重要である。

【地域の主要問題】
 地域の基本的課題は生活基盤の整備、人間関係の柔軟性である。時によって 外部条件として環境破壊、自然災害、経済条件の変動等への対応が主要な問題 になる。
 子供の教育は家庭と学校を両輪として、地域内での協力がなくてはならない。 子供の教育環境が親の地域問題への取り組みの端緒となる。地域外に職をもつ 親も、子供の教育にかかわって地域に関わる。

【地域計画】
 人間関係は日常的であり、一定程度の条件が満たされれば保守化する。区画 整理、再開発等、外部からの干渉がなければ変化を望まない。放置しておけば 生活基盤は劣化する。構造物は保全しなければ、しまいには機能しなくなる。 人口の増減、周辺地域の変化等に対応しなくてはならない。外部環境、全体的 環境の変化に対応しなくては構造物でなくとも、支障が生じる。
 生活基盤として気象環境、上下水道、消費財市場、廃棄物処理、交通、住宅、 文化施設等は都市生活者にとっては自然環境ではない。農村においても都市化 しつつある。都市計画は従来専門家なり、行政なりが全体配置・条件から線び きを行い決定してきた。

 地域ごとの長期的生活基盤整備の計画が立てられるべきである。地域によっ てそれぞれに特色がある。産業立地として、生活基盤としてそれぞれに特色が あるにも関わらず、地域住民の要求すべてに応えられる計画はありえない。ど のような地域にするかの全体的合意が基礎に作られなくてはならない。
 地域は日常生活の場であり、急激な改変は生活破壊につながる。道路の拡幅、 街並整備、共同溝、防災計画等は緊急なものはともかく、数十年単位の計画と して公開され、合意されるべきである。
 十年程度の中期的生活基盤整備として、再開発等による、地域活性化計画を 公開合意すべきである。基本的には構造を変えずに人口の増減、技術革新に対 応することも地域の選択として中期計画としてあるべきである。

【自治の基盤】
 地域の人間関係は感情問題でもあり、政治問題でもある。日常的な利害関係 は感情問題に発展しやすい。人間同士の交流の場として、地域の人間関係を一 定以上の水準に維持する意識的取り組みが必要である。
 地域問題が生じた場合、解決する制度としての人間関係の整備が平衡して進 められなくてはならない。決定の有効性の確保と、決定合意をつくりだするた めのエネルギーは人間関係の深まりによってできる。いつでも問題を提起でき る条件は円滑な意思疎通と、共通の問題意識によって可能になる。問題の解決 へ向けて決定する制度・方法は子細な問題でも取り組むことによって運営され、 訓練される。行政機関が執行するのか、地域住民の手で実施するのかの切り分 けは地域の人的つながりがなくては問題にすらならない。。
 こうしたことを内容とする地域の対応力が地域の柔軟性、活性と呼べるもの である。こうした柔軟性、活性がない地域は問題提起すら行われないか、地域 ボスの支配下におかれる。そこに地域民主主義はない。
 地域問題は基本的に民主主義の日常的問題でもある。

【地域の行事・運動】
 地域には地域としての行事がある。地域の祭り、施設の催し、学校の行事が ある。職業、社会的地位、年齢、性別等様々な違いを超えて参加する行事があ る。
 地域の特色に応じた運動、消費者運動、PTA活動等がある。
 違いを超えて運動、組織訓練の場があり、経験の交流の場がある。伝統がな くても地域内で広がりのある行事には社会的価値がある。子供達への教育効果 も、地域行事への大人の参加によって期待できる。

【地域の権力関係】
 地域は商工業者の営業活動と、利権とによって支配されやすい。地域内にあ っては地元商工業者の営業活動と不可分のものとして政治活動がになわれる。 また、権力欲の手近な目標にもなる。国家権力にとっては有権者を確実に掌握 する単位として、地域権力のおさえが必要になる。
 日本独特と言われる地縁関係は普遍的要素も大きく、全面的に否定される政 治制度ではない。かつて隣組制度、連帯責任制度は個人生活の政治的統制手段 であった。しかし、民主主義の実質化は生活の場である地域に基礎がある。間 接民主主義、国政の民主化だけで民主主義は実現されない。

【地域の政治情勢】
 地域政治は日常活動の政治である。日常活動からはなれて地域政治はない。 ただし、日常活動だけで政治情勢は決定されない。日常活動だけで有権者の投 票が決定されるものではない。
 地域の柔軟性、活力を民主主義の主体としてどれだけ組織できるのか、政治 的にどれだけ影響力が及ぶのか、政策・理論をどれだけ科学的にできるのかが、 主体の問題である。
 地域ボスと民主主義主体との力関係、地域ボスの権力関係、警察を含め行政 権力の地域での権力構造をとらえなくてはならない。


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