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第二編 情勢

 世界の枠組みを知ること。
 主要な問題を理解すること。
 関係する問題を理解すること。
 日常的な問題を理解すること。
 主要な力関係を理解すること。
 可能性と、選択可能な策を知ること。
 情勢は人間社会を中心とした現実の動きである。

 世界の国のすべてを理解することはできない。国際連合加盟国ですら1994年 10月末で184カ国ある。しかし、主な国、世界に影響する問題を持った国、地域 について、主体的に把握しなくてはならない。国内であっても47都道府県につ いても、さらに単位地方自治体663市1994町、578村の名すら覚えきれない。
 情報が氾濫しているようであるが、類型化されており本質的情報は限られて いる。情報を氾濫させているメディアの傾向を理解するフィルターとしても情 勢の把握は不可欠である。視聴率、宣伝売り上げに影響されてメディア番組、 記事の編成がおこなわれている。ニュースの内容も取材制限、取材対象の選択 がおこなわれ、権力による圧力が陰に陽にある。これらによる歪みを補正する フィルターを基本的情勢を理解することで用意しておかねばならない。

 日本での生活情報だけで世界を理解することはできない。それぞれの地域、 国からみた歴史、宗教の社会的意味、権力の行使形態、政治対立の形態、人間 性の理解が地域、歴史によって異なっている。人類の普遍性と社会・文化の異 質性を考慮して世界を把握しなくてはならない。
 日本が世界といよいよ強いつながりを持つようになる、といった受身なだけ でなく、日本が世界に影響力を持ちつつある、軍事的にすら世界に進出し始め た時代に、我々日本の主権者が日本の世界での悪行を告発しなくてはならない。
 日本の国際ニュースはアメリカ中心の視点から取捨選択されている。「民主 主義」の国アメリカは同時に世界の盟主、現代帝国主義の中枢である。人種の るつぼでありながら、すべての人種が代表されてはいない。人種差別の問題で も中心はこれまで黒人である。

 資本主義と社会主義を比較する場合、いずれの立場からも論点を整理せずに、 相手の欠点を数え上げる傾向があった。少なくとも、本質的問題と現象として の問題は区別されるべきである。
 今日最も大きな問題は地球環境の保全、生活水準格差の拡大であり、解決の ための障害は社会主義国の一連の誤りにあった。人類史発展の可能性を阻害す る誤りである。いかに本質的に共産主義がよくとも、先進資本主義国の人間が、 かつての社会主義を選択する可能性はほとんどない。旧社会主義国の諸現象の 誤りの原因と、それを防ぐ保障がなくてはならない。
 ごく単純化した答えは、悪い奴は社会主義国にも資本主義国にもいる。誰で も権力を手に入れることのできる平等社会では、悪人が権力を手に入れること、 権力を強化することは容易である。一方に資産を守ることで人間関係を組織し ている不平等社会では、その私利を守る人間関係が悪人を中枢に近づけない。 しかし、正しくあろうとする人間は社会主義、共産主義に向かう。
 理念の上で、資本主義は必要悪を是認する社会である。資本主義では不公正 も経済発展のために許される。
 社会主義は理念の上で悪を許さず、それ故、現実の悪に対する対応は歪んだ ものになる。旧「共産主義」国では、なにが悪であるかを明らかにせずに都合 で精神病院に閉じ込めたり、利権屋に権力を与えたりした。


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