概観 全体の構成
人間の生きることは全面的であり、常に前進的である。
人間の生きることの位置づけは、全世界と関連し、そのすべての統一として、 未来へ向かっている。
人間は世界の主体である、物質の歴史的、構造的発展の最高段階の存在であ る。
しかも、具体的な個々人として生きていることが、世界の変革を担っている。 個々の人の生きざまが対象であり、目的であり、手段であり、主体である。
全世界の発展と自分自身の生き方を一致させて生ること。それを放棄するこ と、あるいはそれに反対すること、いずれも可能であるが、それ故に個々人の 生き方が問題にされねばならない。
個々人の生き方は物質的でも、生物的でも、感性的でも、理性的でもない。 全ての統一として、統一を意識的に実践してこそ人間の生き方がある。
それによってこそ自然的、社会的、思想的歪みを明らかにし、疎外された人 間性を回復しえる。
【肉体と精神】
人間は肉体と精神の統一体である。精神は肉体に媒介され、肉体は精神によ って制御される。肉体と精神は別々の部分の統一として有るのではない。意識 と肉体は対立する存在ではない。人間存在のそれぞれの面としての現れである。
精神活動は肉体の物質的運動過程によって実現している。感覚、感情、意志、 知性は物質的運動過程として現れる。精神を媒介する物理的運動過程は精神に よって方向づけられる。
【個人と社会】
人間は個体性と社会性の統一体である。人間は個性を持った類的存在である。
人間の個体維持の活動は生物としての物資代謝である。人間の物質代謝は社 会的に組織されて実現される。個人の衣食住の消費は社会的生産によって保証 される。個人の誕生、生長は社会的に保証される。
社会は個人の活動によって実現する。人間の知性は社会的に継承され、発展 する。個人は他人を介して自己を規定し、価値づける。精神活動は社会的活動 として文化を創造してきた。
【人類社会の歴史】
人類は、生物は宇宙の物質進化の過程で生み出された。人類は生物進化の過 程で生み出された。人類は社会の運動として歴史を発展させてきた。
人類史は今現在として継承され、実現されている。人類史は今現在の人間に よって実現し、変革される。
【変革主体】
人間は自然環境に対して主体的に働きかけることによって、ヒトから人間に なった。人間は現実変革能力を発展させるが、それは人間の能力自体の発展で ある。現実変革能力は普遍性を持ち、人間自体の変革、人間社会の変革をも可 能にする。人間は対象を変革することによって、自分自身を変革する。
【自己実現】
人間は対象を物質として、概念として自分の内に取り込む。人間は取り込ん だ物質を排泄する。人間は概念に基づいて物質を再構成し、物質の運動を方向 づける。
人間は自分自身を対象とし、自分を変革することによって他との関係を変革 する。他との関係としての自己を変革する。
人間は対象を自己に取り込み、自己を対象として作り出して自己を実現する。 人間は対象を変革し、自己を変革して自らを実現する。
【社会実践】
人間は同時に類としての存在である。個人だけの変革能力では、今日の生活 を維持することもできない。相互扶助なくして何人かの個人は生きのびても、 人類を継承することはできない。
人間は社会的に存在し、社会的な価値を基準にする。社会的関係が肉体的、 精神的な価値の源泉になる。コミュニケーション自体が社会的実践である。コ ミュニケーションすることで自分の存在を確かめる。
人間は世界を自らの内に反映し、認識する存在として宇宙の構造と歴史、物 質と時間と空間と歴史、生物の進化と生命過程、人間社会と歴史について学ん できた。そして、人間自身について理解してきた。
世界には普遍性がある。普遍性とは全体を規定するものであると同時に、部 分をも規定するものである。個人は部分の特殊は問題だけによって規定される ものではない。全体と部分を貫く普遍的な問題にも関わり、普遍的な問題との 関わりの中で個人の問題も考えなくてはならない。普遍的な問題の中に、個人 の問題を位置づけなくては個人の問題も、その解決の方向も示されない。
人類はその現実変革の力の発展に対する、それを制御する能力の発展の遅れ によって危機的状態にある。
核兵器による地球環境の全体的破壊は、数十分で現実化されうる。生物に取 って、取り返しのつかない破壊能力を大国主義がもてあそんでいる。生物、化 学兵器も、同じ質の破壊である。にもかからず、大量殺人である戦争は地上か ら無くなっていない。
地球環境の破壊は戦争だけではない。化学物質の地球環境への拡散は大気、 海の組成、構造を変化させる。資源の乱獲・乱費は森林破壊、化石燃料の消費 によって地球環境を変えている。
人間社会内でも一方で享楽、自己喪失による人間破壊、他方で貧困による人 間破壊が蓄積されている。差別と情報の支配により、人間社会の人間による解 放が人間の手からうばわれている。
この普遍的状態は海の向こうの問題ではない。我々の生活基盤の問題である。 我々の生活を変革することと一体の問題である。
人類は地球規模で考えることができるようになってきた。人類は人類を安定 して養うだけの物質代謝の技術力を手にしつつある。人類は人間社会の制御の 難しさとを学び、克服する通信・情報手段を開発しつつある。人類は民主主義 の原則、民主主義のしなやかさを学び、人間が主人公の社会を実現する可能性 をつかもうとしている。これまでの闘いの社会歴史に終止符を打ち、理性によ って未来を切り開く可能性を手にしようとしている。
それとも、これまでの闘いの社会史を人間の本性とし、その勝利者による支 配を受け入れ、地球環境を破壊・放置し、人類破滅の危機の下で生活し続ける のか。
アメリカの世界支配の下で経済、外交、文化すべての価値観に疑問すら持た なくなっているが、日本はどのようにあるべきか。アメリカ人の自主独立、そ れに基づく独創性と、民主主義についてはまったく学ぼうとしていない。
これまでの日本の繁栄が国内の勤労者、農林漁業者の犠牲によって、またア ジアを始めとするかつての植民地国の自然資源の収奪、人民の抑圧によって実 現されていることを改めようともしない。アジアの一員としてアジア、中南米 アメリカ、アフリカの地域の発展に寄与することが日本人の役割である。アジ アの一員でありながらアジアを侵略し、欧米とともにアジアを収奪した過去に 対しても、これからのアジア等の発展の未来に対しても日本の役割は定まって いる。アメリカ合衆国のアジアでの代理人でいて良いはずはない。
さらに、実体のともなわないものであっても、理念として掲げた平和憲法を もつ日本が国際貢献をする道は、他国へ軍事力を行使することではない。日本 の軍事力の海外展開を願っているのは、アメリカ合衆国と、西ヨーロッパの一 部がそれらを補完するものとして期待しているにすぎない。軍事力を放棄する ことでの国際貢献の先頭を切ることこそ日本の選択である。
日本の民主化、平和、独立、生活向上の実現は、世界の被抑圧民族、階級の 解放にも資する。具体的日常的課題として諸課題を統一的に、統一された主体 的運動が未来をきりひらく 自らの人間性は、共同の中でのそれぞれの社会的役割を果たすこと、自分の 参加する社会での主体性と民主主義の実現、個人の課題と人類の課題を統一的 に追求することによって実現される。
概観 全体の構成