意識
意識はヒトを含む動物の生きている世界の表現です。
ヒトも動物も含む生物は環境条件の中で物質を取り入れて自らの身体を構成し、不用になった物質を排出する物質代謝、新陳代謝によって生きています。
飲食し、排泄する代謝秩序が崩れると病気になり、失われると死にます。
動物には物質代謝で成り立つ身体運動制御の一端を神経系が担います。
神経系が環境条件に対しする身体制御の情報処理表現が意識です。
ですから、生きていないロボット、人工知能に意識が備わるかが問題になります。
生きることに代わる世界とのやり取りによって意識が備わる可能性があります。
意識は身体制御の情報処理表現でありながら、その表現を受容します。
意識は意識を取り巻く世界を表現し、その表現された世界を受容し、意識しています。
つまり、意識は意識を意識しています。
世界を表現し、表現された世界を受容する意識の働きが認識です。
意識に表現された世界が客観であり、表現された世界の受容が主観です。
ただし、表現された客観世界も、意識としての主観表現であり、主観表現を反省する意識によって客観化されます。
人の意識も神経系の発達とその間の生活経験と学習をとおして世界を認識し、さらに自らをも理解するようになります。
意識が意識自体、自己意識を理解できるようになるまでには様々な解釈を生みます。
自らの意識(mind)に関わって「心(heart)」「魂(soul)」「精神(spirit)」などの解釈があります。
精神は身体を超えて集団や時代にまで拡張されます。
魂は身体と対応しながら、身体とは別に捉えられます。
心は身体に宿りながら身体と区別される物質とは別のようです。
人の幼い頃には物が動くのはそれらによると解釈するアニミズムを抱く傾向があります。
いずれも物質である身体によっては説明できません。
意識は表現を受容し、意識として表現します。
意識は何らかの表現対象を受容しています。
意識は受容する対象を失うと表現も意識も消え、寝入ってしまいます。
表現だけであるなら、もはや人工知能=AIは人のまね以上です。
人の表現をまねるのではなく、経験によって受容する表現、経験に重ねる表現が意識の表現です。
経験による表現の受容、経験に重なる表現が意識の本質でしょう。
宇宙にどれほど生物が存在するかは不明ですが、少なくとも地球上には私たちが生存しています。
生物は環境から取り入れた物質を同化して自らを構成し、不用になった物質を異化する
代謝秩序* によって生存しています。
神経系の基本は身体外からの
感覚器官* への刺激を受容して運動器官へ伝え身体反応を制御します。
さらに、神経系は感覚器官と運動器官を介するだけでなく、運動器官の感覚器からの信号制御を統合して
固有感覚*、
所有感覚* として自らの身体を表現します。
また、神経系は感覚系と運動系を随伴反射で結び、自分の動きと対象の動きを区別しています。
つまり、感覚、脳、運動の信号伝達は一方的ではなく、運動の制御もモニターする感覚が意識にとって重要です。
これらと触覚からなる
体性感覚* は意識が機能する基礎を成しています。
神経系は感覚器官からの視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚、そして
平衡感覚* を含む
内臓感覚* も表現します。
意識は身体と身体の対象との相互作用で生じる神経信号処理の表現です。
意識は身体と身体の対象とからなる世界を表現しています。
その世界の表現が世界感であり、意識は表現である世界感を意識しています。
意識は神経信号処理の統合した
表現であり、その表現を対象として意識します。
意識は表現であり、その表現を対象として受容する
再帰構造としてあります。
再帰構造は
受容した神経刺激の表現を再度対象として受容します。
一端受容した神経刺激表現を記憶、保持して対象化し、再受容します。
意識が意識できるのは感覚、感情、記憶だけです。
意識が意識する神経信号表現は感覚器からの神経信号と、脳内を含む身体からの神経信号以外ありません。
意識は感覚、感情と相互に作用します。
意識は意識を構成する感覚、感情へも作用します。
意識は注意する感覚を切替え、注意を向ける対象も選択できます。
意識は集中することで感覚を研ぎ澄まし、散漫になると鈍化します。
意識は感覚器官からの神経信号を受容するだけでなく信号表現を補完し、修正もします。
様々な錯覚は神経信号表現を修正することで生じます。
視覚では盲点などで欠けた神経信号を補います。
感情は意識によって豊かさ、鋭さが変わります。
感情の表現である気分は意識的に切り換えることもできます。
対象を理解することで感情は強まり、深まります。
対象に気がつかなければ感情は生じません。
意識は感覚、感情、記憶と身体とを介して他の存在と相互作用しています。
意識は他の存在との相互作用で実在感、現実感、存在感、身体の所有感を表現し、受容します。
記号接地問題の答えです。
意識には意識できない
潜在意識 と、意識できる
顕在意識の区別があります。
今として意識されている感覚、感情、記憶が顕在意識です。
顕在意識に受容されない意識表現が潜在意識です。
「無意識」とも呼ばれますが意識はあるので「潜在」意識です。
今現在意識している対象以外の感覚、感情、記憶は潜在しています。
潜在には、意識しようとしてもできない本来の潜在意識があります。
意識は身体を超えて拡張します。
意識は身体と身体の対象の相互作用を制御して実現しています。
身体と身体の対象との相互作用の制御をとおして、身体を意識します。
身体の成長と老化、技能を身につけることでたえず身体意識を更新しています。
わずかな変調も違和感として意識できます。
感覚も身体と身体の対象の制御過程に重ねて表現されています。
ですから、身体に止まらず、身体の対象制御も身体の制御と一体化します。
道具を身体の一部のように操り、箸先でつまんだ豆の柔らかさ、艶も感じられるようになります。
身体と身体の対象の制御過程に重なった感覚が物事の意味の裏付けです。
逆に脳へ磁気や薬品を作用させるなど、身体と身体の対象の制御過程に干渉すると
体外離脱*を生じさせることができます。
箸を使って食事するとき、箸先にまで神経が届いて食材の質を感じ取ることができます。
運動の熟達者がゾーンに入るとゲームの光景を俯瞰できるそうです。
2025.02.21